偏差値も知名度も今イチの白百合に男の子がコーフン——大学にも“スタイリング化現象”

大学には全国区と東京地方区の二種類が存在します。共立女子大、実践女子大、日本女子大、大妻女子大といった大学は、全国区です。全国的に知名度が高いせいか、学生も全国各地から集まります。

たとえば、実践女子大の合格者上位高校を見ていくと、磐城《いわき》女子、足利《あしかが》女子、新潟中央、福島女子、市立浜松といった名前が目につきます。前回、聖心女子大との比較で登場した日本女子大の場合は、鶴丸《つるまる》、水戸二、宇都宮女子、前橋女子、浜松北、富山、松山東と、更に全国区の風格です。

では、これに対して、東京地方区の大学には、どんな学校があるでしょう。白百合女子大を、その好例として挙げることが出来るでしょう。合格者上位高校は、ある種、聖心女子大の場合と似通っています。豊島岡《としまがおか》女子、白百合学園、東京女学館、光塩女子、浦和明の星女子、吉祥女子、恵泉女子、田園調布雙葉……。多少、聖心女子大よりもミッション系女子高の率が低くはなるものの、いずれもが首都圏にある私立の女子高です。

では、これらの大学の偏差値は、それぞれ、どのような具合でしょう。またもや、河合塾《じゆく》の資料によります。もちろん、学科によって偏差値の違いが多少はありますが、それでも、ランキングの順番自体は変わりません。ここでは、国文学系で比較してみます。

一番、難易ランクの高いのは、実践女子大です。難易ランク5、偏差値55・0〜57・4。続いて難易ランク7、偏差値50・0〜52・4の大妻女子大と共立女子大。そうして、白百合女子大は難易ランク9、偏差値45・0〜47・4。ちなみに、武蔵《むさし》野《の》女子大は難易ランク8、昭和女子大は難易ランク9です。

けれども、男の子にとってのイメージ上でのランキングは、不思議なことにこれらの中では白百合女子大が一番高いのです。女の子が自分の付き合っている男の子の学校名を友だちに話す場合は、一般的に偏差値の高い学校であればあるほど、自慢気になるのとは、大きく異なります。

この法則が適用されないのは、彼の家がよっぽどの金持ちであるとか、四千万円ほど使って新設私立医大に入学してフェラーリを乗り回している男の子がボーイフレンドであるといった場合のみでしょう。

話を元に戻《もど》しましょう。どうして、多くの男の子たちは「僕《ぼく》の彼女、実践なんだ」と言うより、「一応、白百合なんだけれど」と言った時の方が、胸を張れる気がするのでしょう。

それは、白百合が東京地方区の大学だからです。全国的レベルでの知名度と偏差値の、そのいずれもが低くても、出身者の大部分は東京の、しかも、ミッション系である率が高い私立女子高を卒業している。この事実がオッシャレーな錯覚を抱かせるのです。

ミッション系女子高へ子供を入れる家庭と公立の共学高校へ子供を入れる家庭の違いについては、前回、述べました。こうした点での家庭の考え方の違いは、その子供の雰囲気《ふんいき》にも大きな影響を与えます。ただし、それはどちらの選択が好ましいか、という問題ではなく、ただ単にオッシャレー度が違うというだけのお話でしかないのですが。

けれども、こうした、本来、どうでもいいことにエネルギーを使うのが、最近の傾向です。今までに僕が繰り返し述べて来ているように、寒くて死にそうだから服を着るという、第一義の目的を誰《だれ》もが満たせるようになると、それ以外の、たとえば、肌触《はだざわ》りがいい、デザインが素敵だ、どこそこのデザイナーの服だ、といった、本来、あってもなくても本質には影響のないことに、人間、エネルギーを使うようになります。“物離れの物価値”、あるいは“スタイリング化現象”と僕が呼んでいる傾向です。

大学についても、昨今、同じようなことが言えます。そうして、この場合、自らの知的欲求に応《こた》えるために、より高度な教育を受ける、という第一義の目的は、もう、ほとんど考慮に値しないものとなってしまっています。誰もが、入ろうと思えば大学に入れるようになってしまったからこそ逆に、学力上の偏差値というスケールとは別の、オッシャレーかどうかという意味合いでの偏差値に重きを置くようになって来たのです。

もう一度、今度は全国区であるとした大妻女子大の合格者高校別一覧を見てみましょう。豊島岡女子、熊谷女子、長生、吉祥女子、土浦第二、足利女子、前橋女子、浦和西、千葉女子と、圧倒的に公立の高校が続きます。

もっとも、実践女子大や日本女子大とは違って、関東地方の高校ばかりです。東京地方区と呼ぶことは出来ないにしても、広域首都圏地方区とネーミングすることくらいは出来そうです。けれども、前述のように、ドーナツ・ゾーンの公立高校ばかりです。それが、残念ながら、全国区の大学としてリスト・アップされる理由となっています。

こうした傾向は、短大についても言えます。青山学院、東京女子大、学習院のそれぞれ、短大は、偏差値は高いものの、全国区であるため、今イチ、オッシャレーでない学生の数が多いのです。けれども、偏差値は決して高くない川村短大、玉川学園短大の場合は、インゲボルグからジュンコ・シマダへと早くも移行しつつある東京地方区ならではの雰囲気が醸《かも》し出されています。

知的欲求を満たすためというよりも、むしろ、聞こえが良くて、しかも、数多くの男の子にチヤホヤされるために女子大へ通うならば、人間、何も無理して偏差値の高いところを狙《ねら》う必要はありません。形而下《けいじか》の生理に素直に従って行動しながらも、その学校のネーミングとミッション系であることが、清楚《せいそ》そうな錯覚を抱かせて、若い男の子を興奮させる白百合女子大の存在は、そのことを見事に物語っています。

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